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 平成29年度改正で所得拡大促進税制が拡充!でも適用の仕方は一層複雑に

 平成29年度の税制改正では、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度」(所得拡大促進税制)について見直しと拡充がされています。
 この改正は、雇用者一人当たりについて2%以上の賃上げがされたときは、従来の雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除に加えて、さらに税額控除の上乗せを行うとするもので、特に中小企業者に賃上げに対するインセンティブを与えようとする内容になっています。この改正は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます。

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1.平成29年度の改正の内容
① 改正の内容

 所得拡大促進税制により税額控除の適用を受けるためには、次の3つの条件を全て満たす必要があります。3つの条件のうち、平成29年度の改正は《条件3》がポイントになります。

《条件1》 適用を受けようとする事業年度の雇用者給与等支給額が、基準事業年度の雇用者給与等支給額より一定
     割合以上増加していること(当期の給与が基準事業年度の給与より一定割合以上増加していること)
《条件2》 適用を受けようとする事業年度の雇用者給与等支給額が、比較対象年度(前期)の雇用者給与等支給額
     以上であること(当期の給与が前期の給与以上であること)
《条件3》 適用を受けようとする事業年度の平均給与等支給額が比較平均給与等支給額(前期の平均給与)を超え
    ていること(当期の一人当たりの平均給与が前期の一人当たりの平均給与より高いこと)

 上記3つの条件のうち、実務上いちばん時間を要するのは《条件3》の平均給与等支給額の算定です。
 
改正前は当期と前期とについてそれぞれ平均給与等支給額を算定して、どちらが大きいかを判定するだけで済みました。当期の額が前期の額を超えていれば所得拡大促進税制の適用が受けられますし、超えていなければ受けられませんでした。
 ところが、平成29年度の税制改正により、平均給与等支給額について、当期の額の前期の額に対する増加率が2%以上の場合には、改正前の10%の税額控除に加えて一定の上乗せ控除割合を適用することとされました。したがって、改正後は、平均給与等支給額の増加率が2%以上か否かの判定が必要になってきます。
 適用年度の平均給与等支給額(当期分) - 比較平均給与等支給額(前期分)  

≧  2%
比較平均給与等支給額(前期分)  
② 具体的な税額控除限度額の計算方法は?
 《条件1》・《条件2》・《条件3》の全てを満たすことが確認できたら税額控除限度額の算定に進みます。「平均給与等支給額」が問題になるのは増加率が2%以上か否かの判定までです。税額控除限度額の計算自体には平均給与等支給額は使いません
 税額控除限度額の計算に当って、まず前提として次の3つの要素を計算しておきます。
  当期の雇用者給与等支給額当期の給与額
  前期の雇用者給与等支給額前期の給与額
  基準事業年度の雇用者給与等支給額平成25年3月から平成26年2月までの間に決算月を迎える事業年
   給与額

 税額控除限度額の計算をする上で、改正前と大きく異なる点は、大法人等と中小企業者等(主に資本金が1億円以下の法人)とによって制度の適用関係が違っていることです。
 以下、大法人等と中小企業者等とに区分して、税額控除限度額の計算の仕方を見ていきましょう。
 大法人
 ● 平均給与等支給額の増加割合が2%以上である場合

     (㋑-㋩)×10% ㋑-㋩)は雇用者給与等支給増加額といいます。
  +)   ()× 2% *()の額は、上記(㋑-㋩)の額を限度とします。

 
  =  税額控除限度額   
 ● 平均給与等支給額の増加割合が2%未満である場合

    所得拡大促進税制の適用はありません。
 中小企業者等
 ● 平均給与等支給額の増加割合が2%以上である場合 

     (㋑-㋩)×10% ㋑-㋩)は雇用者給与等支給増加額といいます。
  +)   ()×12% *()の額は、上記(㋑-㋩)の額を限度とします。

 
  税額控除限度額   
 ● 平均給与等支給額の増加割合が2%未満である場合

    改正前と同様に、税額控除割合は10%です。

2.制度の適用を受けるための条件の確認
 平成29年度の税制改正に関する説明は上記のとおりですが、ここで復習の意味で今回の改正点も含めてもう一度所得拡大促進税制の適用を受けるための3つの条件を確認しておきましょう。
 この制度の適用を受けるためには、次の3つの条件の全てを満たすことが必要です。
《条件1》    適用を受けようとする事業年度の雇用者給与等支給額が、基準事業年度の雇用者給与等支給額より X %以上増加していること。
 適用事業年度の雇用者給与等支給額 - 基準事業年度の雇用者給与等支給額    

  X %
 基準事業年度の雇用者給与等支給額    
上記の X %は、次のように事業年度ごとに段階的に適用されることになっています。
 平成28年2月決算期まで 2%以上
 平成28年3月決算期~平成29年2月決算期 3%以上
 平成29年3月決算期~平成30年2月決算期 4%以上(中小企業者は3%以上)
上記以外の事業年度 5%以上(中小企業者は3%以上)
 * 上記の表は、月末を事業年度終了の日としている法人を前提にしています。
 ● 雇用者給与等支給額とは?
  その事業年度の損金の額に算入される給与の額のことです。この給与には、正社員ばかりでなくパート
 やアルバイト、日雇いなどに支給したものも含まれます。また、未払の給与も対象になります。
  但し、役員や役員と特殊関係にある人に対して支給する給与は除かれます。また、使用人兼務役員に対
 して支給された給与は、使用人部分の給与も含めて対象から除外されます。
 ● 基準事業年度の雇用者給与等支給額とは?
  基準事業年度に支給された雇用者給与等支給額のことです。基準事業年度というのは、平成25年4月
 1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度を言います。簡単に言えば、
 成25年3月から平成26年2月までの間に決算月を迎える事業年度
ということになります。

《条件2》    適用を受けようとする事業年度の雇用者給与等支給額が、比較対象年度の雇用者給与等支給額以上であること。
 ● 比較事業年度の雇用者給与等支給額とは?
   その事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額のことです。

《条件3》   ① 適用を受けようとする事業年度の平均給与等支給額が、比較平均給与等支給額を超え
 ていること。

② 大法人(主に資本金1億円超)の場合は、平均給与等支給額の比較平均給与支給額に
 対する増加率が2%以上であること(中小企業者は、①を満たせば増加率が2%未満でも
 改正前と同じ10%の税額控除が受けられます)。
 適用事業年度の継続雇用者等給与支給額    

(当期の平均給与等支給額) >  前期の平均給与等支給額
分子の給与等の支給を受けた継続雇用者数 (月別の人数を合計した数)    
 ● 平均給与等支給額とは?
   その事業年度の継続雇用者給与等支給額を、この支給を受けた継続雇用者数で割った金額です。
 ● 継続雇用者とは?
   その事業年度と前事業年度の両事業年度で給与の支給を受けた雇用者のことです。したがって、当期
  だけ、または前期だけに給与の支給を受けた人は継続雇用者には含まれせん。逆に、当期と前期にお
  いてそれぞれ一度でも給与の支給を受けていれば継続雇用者に該当することになります。
 ● 継続雇用者給与等支給額とは?
  雇用者給与等支給額のうち、継続雇用者に支給された給与等の額を言います。
  但し、一般被保険者に対して支給されたものに限られますから、継続雇用者に対して支給された給与で
  あっても、一般被保険者に該当しないときに支給されたものは除かれます。
  一般被保険者とは、簡単に言えば雇用保険に加入している人のことです。

3.実務的な対応の仕方は?
 実務的には次の順序で、制度の適用の可否を判断していくのが良いと思われます。
<第一段階>
  まず、その事業年度の所得金額がプラスになっていることを確認します。
→ マイナスであれば制度の適用の余地はありません。

 <第二段階>  (   《条件2》  の確認 ) 
  次に、その事業年度の役員報酬を除く給与の額が前年以上になっていることを確認します。
 * ここまでは、当期の法人税申告書の別表四と損益計算書(当期・前期比較)があれば判定できます。

 <第三段階>  (   《条件1》  の確認 ) 
  次に、その事業年度の役員報酬を除く給与の額が、基準事業年度の給与の額より X %以上増加していることを
 確認します。
 増加率がX %未満であれば制度の適用はできません。

 <第四段階>  (   《条件3》  の確認 ) 
  ここまで来たら制度を適用できる可能性が高くなります。ここで一番判定が面倒な平均給与等支給額の前年対比
 を行って、制度適用の可否を判断します。平成29年度の改正で、平均給与等支給額の増加率が2%以上か否かの
 判定が必要になりましたから注意が必要です。

 <第五段階>  (  税額控除控除限度額の算定
  制度を適用できると判定されたら、税額控除限度額の算定を行います。

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