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No.38 不動産業で簡易課税を選択するなら、平成26年9月までの届出が有利!

 これまでは、不動産業を営む方が消費税の簡易課税を選択している場合は、消費税の計算をする上で「第5種事業」として、50%のみなし仕入率が適用されてきました。

 ところが、平成26年度の改正で、不動産業は「第6種事業」に分類されることになり、みなし仕入率も50%から40%に引き下げられることになりました。この改正で、不動産業の方は概して不利になりますが、一定の経過措置が設けられており、少しでも有利に簡易課税制度を利用するためには、平成26年9月30日がポイントになります。

1.不動産業は簡易課税の方が不利になる場合も

 消費税は、お客様から預った消費税から、仕入業者などに支払った消費税を差引いた差額として計算されます。

これが原則的な消費税の計算方法(原則課税)です。ところが、お客様から預った消費税は比較的簡単に計算できますが、支払った消費税を個々に計算する事は大変面倒です。そこで、支払った消費税を預った消費税の〇%とみなして大雑把に計算しようというのが簡易課税です。

 この〇%を、「みなし仕入率」と言いますが、みなし仕入率は業種によって6種類(改正前は5種類)に分類されています。不動産業は、改正前は第5種事業(サービス業)に分類されていましたが、改正で第6種事業とされ、みなし仕入率も改正前の50%から40%に引き下げられました。

 

不動産業のみなし仕入率の改正

業種の区分

          第5種事業 → 第6種事業(新設)

みなし仕入率

          50%   → 40%

 不動産業の場合は、一般に消費税がかかる仕入(課税仕入)が少ないため、改正前は、不動産業は原則課税よりも簡易課税の方が有利と言われていました。

 下表の例を見ますと、改正前の簡易課税のケース①では、納付する消費税は500で原則課税の600よりも少なくなっています。ところが、改正後の簡易課税のケース②では、みなし仕入率が40%に引き下げられているため、結果として納付する消費税は600となり、原則課税と同額になります。

 

原則課税・簡易課税の有利・不利の比較例(不動産業の場合)

  原則課税 <改正前>簡易課税 ①

<改正後>簡易課税 ②

預った消費税 1000 1000

1000

支払った消費税

(実際に支払った消費税)

400

(1000×50%

500

(1000×40%

400

納付する消費税

(差額)

(1000-400)

600

(1000-500)

500

(1000-400)

600

 このように、改正後は、節税の点から見ても不動産業は必ずしも簡易課税の方が有利とは言えなくなってくると思われます。

 また、簡易課税は一度選択すると2年間適用が義務付けられることや、昨今は消費税の計算は会計ソフトで行うため事務コスト削減という面での簡易課税制度の存在理由が薄れてきていることなどを考えると、今後、簡易課税制度の選択取りやめも視野に入れた柔軟な対応が望まれます。

2.平成26年9月30日までに簡易課税の届出を出せば、みなし仕入率は50%のまま

 上記のように、改正により不動産業のみなし仕入率が40%に引き下げられる訳ですが、この改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間(会社の場合は、通常「事業年度」と同じ)から適用されます。

 

 ところで、この改正には経過措置が設けられていています。

 

 簡易課税制度を選択する事業者は、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日(分かり易くに言えば前期の最終日)までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しなければなりません。

 

 例えば、平成27年4月1日にスタートする課税期間から簡易課税の適用を受ける場合は、平成27年3月31日までに届出書を提出する必要があります。

 

 この場合、適用を受けようとする課税期間は平成27年4月1日開始ですから、改正後のみなし仕入率が適用される

ことになります。しかし、この場合でも、(27年3月31日といわず早めに)平成26年9月30日までに届出書を提出しておけば、2年間(平成27年4月1日~平成29年3月31日の2期)については、旧みなし仕入率の50%が適用されることになります。これが経過措置です。

 

 つまり、この経過措置によりますと、平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておけば、平成27年4月1日以後に開始する課税期間であっても2年間は改正前のみなし仕入率である50%が適用されることになります。

 

 この2年間というのは、簡易課税の適用が強制される期間を意味しますから、たとえ9月30日までに「届出書」が提出されていても、既に強制適用期間を経過している場合は、経過措置は適用されません(下図①)。

2014.6.21

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