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No.39 平成26年度改正で、所得拡大促進税制の適用法人の範囲が拡大!

 平成25年度の税制改正で、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度」(所得拡大促進税制)が創設されましたが、、平成26年度の改正でこの制度が拡充され、さらに多くの法人が適用を受けられるようになりました。新制度は、平成26年4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。

 制度の基本的な構造や控除率(10%)は改正前と変りません。しかし、改正前は、給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額の5%以上でなければこの制度の適用が受けられなかったのに対して、改正後はこの増加率が2%以上等とされるなど、制度の適用を受けられる法人の範囲が拡げられています。

1.改正後の所得拡大税制の概要

 この制度は、次の要件を満たせば、雇用者給与等支給額が基準事業年度の雇用者給与等支給額より増加した部分の金額(「雇用者給与等支給増加額」と言います)の10%を法人税額から控除するというものです。但し、控除額はその事業年度の法人税額の10%(中小法人の場合は20%)が限度とされています。

 

<制度の適用を受けるための条件>

 この制度の適用を受けるためには、次の3つの条件の全てを満たすことが必要です。

 

条件1

 適用を受けようとする事業年度の雇用者給与等支給額が、基準事業年度の雇用者給与等支給額より X %以上増加していること。

  適用事業年度の雇用者給与等支給額 - 基準事業年度の雇用者給与等支給額
 
  基準事業年度の雇用者給与等支給額
≧ X %

上記の X %は、改正前は5%でしたが、平成26年度の改正で次のように緩和されました。

平成28年2月決算期まで

2%以上

平成28年3月決算期~平成29年2月決算期

3%以上

平成29年3月決算期~平成30年2月決算期 4%以上(中小企業者は3%以上)
平成30年3月決算期から 5%以上(中小企業者は3%以上)

* 上記の表は、月末を事業年度終了の日としている法人を前提にしています。

● 雇用者給与等支給額とは?

 その事業年度の損金の額に算入される給与の額のことです。この給与には、正社員ばかりでなくパートやアルバイト、日雇いなどに支給したものも含まれます。また、未払の給与も対象になります。

 但し、役員や役員と特殊関係にある人に対して支給する給与は除かれます。また、使用人兼務役員に対して支給された給与は、使用人部分の給与も含めて対象から除外されます。

 

● 基準事業年度の雇用者給与等支給額とは?

 基準事業年度に支給された雇用者給与等支給額のことです。基準事業年度というのは、平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度を言います。簡単に言えば、平成25年3月から平成26年2月までの間に決算月を迎える事業年度ということになります。

条件2

 適用を受けようとする事業年度の雇用者給与等支給額が、比較対象年度の雇用者給与等支給額以上であること。

● 比較事業年度の雇用者給与等支給額とは?

 その事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額のことです。

条件3

 適用を受けようとする事業年度の平均給与等支給額が、比較平均給与等支給額を超えること。

 
適用事業年度の継続雇用者等給与支給額

分子の給与等の支給を受けた継続雇用者数

(月別の人数を合計した数)

=(当期の平均給与等支給額)

> 前期の平均給与等支給額

平成26年度の改正で、平均給与等支給額の計算の前提が下記のように変りました。

● 平均給与等支給額とは?

 その事業年度の継続雇用者給与等支給額を、この支給を受けた継続雇用者数で割った金額です。

 

● 継続雇用者とは?

 その事業年度と前事業年度の両事業年度で給与の支給を受けた雇用者のことです。したがって、当期だけ、または前期だけに給与の支給を受けた人は継続雇用者には含まれせん。逆に、当期と前期においてそれぞれ一度でも給与の支給を受けていれば継続雇用者に該当することになります。

 

● 継続雇用者給与等支給額とは?

 雇用者給与等支給額のうち、継続雇用者に支給された給与等の額を言います。

 但し、一般被保険者に対して支給されたものに限られますから、継続雇用者に対して支給された給与で あっても、一般被保険者に該当しないときに支給されたものは除かれます。一般被保険者とは、簡単に言えば雇用保険に加入している人のことです。

2.実務上の対応の仕方は?

 所得拡大促進税制は、所得水準の改善によって消費喚起を図るという政府の方針に基づく政策的な制度です。

 しかし、中小法人には赤字決算法人が多いことや、従業員の給与を増加させるよりも削減しようとする傾向が強い事などを考えると、中小法人にとって、この制度がどこまで実益を伴うものかは疑問です。

 実務上は、何らかの理由で給与が増加したにもかかわらず、この制度の適用を失念したことによって税額控除の機会を失うことがないようにに注意すべきでしょう。

 そのためには、次の順序で、制度の適用の可否を判断していくのが良いと思われます。

 

<第一段階>

 まず、その事業年度の所得金額がプラスになっていることを確認します。

 → マイナスであれば制度の適用の余地はありません。

 

 <第二段階>条件2の確認) 

 次に、その事業年度の役員報酬を除く給与の額が前年以上になっていることを確認します。

 * ここまでは、当期の法人税申告書の別表四と損益計算書(当期・前期比較)があれば判定できます。この段階で、 

 多くの法人が制度が適用できないことになると思われます。

 

 <第三段階> ( 条件1の確認) 

 次に、その事業年度の役員報酬を除く給与の額が、基準事業年度の給与の額より X %以上増加していることを確認します。

 → 増加率が %未満であれば制度の適用はできません。

 

 <第四段階> ( 条件3の確認)  

 ここまで来たら制度を適用できる可能性が高くなります。ここで一番判定が面倒な平均給与等支給額の前年対比を行って、制度適用の可否を最終的に判断します。

2014.9.16

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