◆ 消費税率8%まであと1年。事務所の家賃はどうなる? ◆
消費税率8%への引き上げは、平成26年4月1日から。では、この日より前に賃貸借契約を結んでいる場合、税率引き上げ後の家賃はどうなるのでしょうか。
消費税率の改正が問題になるのは、事務所や工場など事業のために賃貸借契約を結んでいる場合です。居住用の賃貸借契約の場合は、そもそも取引自体が非課税ですから、今回の税率引き上げは問題になりません。
家主さんの立場からは、税率引き上げに伴って修繕費や管理費が上がるわけですから、これを機会に平成26年4月1日以後は8%の消費税を請求したいところです。
他方、借り手からすれば、契約が税率が5%の時代に結ばれている以上、契約期間が終わるまで5%のまま継続したいところでしょう。
原則的な考え方としては、契約がいつ結ばれたかにかかわらず、平成26年4月1日以後に支払われる家賃については全て8%の税率が適用されます。この考え方は、法人税や所得税の場合と基本的に同じです。
しかし、旧税率(5%)の時代に結ばれた契約の効力は、税率引き上げ後も一定期間継続しますから、平成26年4月1日以後は有無を言わせず一律に8%の税率を適用するというのでは、現実性を欠くことになるでしょう。
そこで、消費税の税率引き上げについては一定の経過措置が設けられ、契約の内容やその結ばれた時期などによって、契約が満了するまで旧税率である5%が適用されることになっています。
具体的には、次の A の要件を全て満たし、かつ B のいずれかの要件を満たす場合に旧税率の5%が適用されます。
A
① 契約が、平成25年9月30日までに結ばれていていること。 | |
② 賃貸借が、平成26年4月1日前からその後の期間まで引き続き行われていること。 |
B
③ 契約で賃貸借の期間と賃貸借中の家賃の額が決められていて、かつ事情の変更などの理由で家賃の変更を求めることができる旨の定めがないこと。 | |
④ 契約で賃貸借の期間と賃貸借中の家賃の額が決められていて、かつ家主、借主のいずれか又は双方からいつでも解約を申し入れられる定めがないこと、その他一定の要件。 |
①と②は契約の前提としてはじめから明らかですが、③と④については、契約書の内容をよく確認してみないと見落としてしまうかも知れません。たとえば、仮に契約書に「経済事情の変更などの理由で家賃の変更を求めることができる」という文言があると、平成26年4月以後に支払う家賃については8%の税率が適用されることになります。
つまり、税率が5%の時代に契約で定められた条件が、変更されずに契約期間満了までそのまま継続される場合に経過措置が適用されると考えればよいでしょう。
ところで、賃貸借契約の中には、契約期間満了後自動的に契約が更新される、いわゆる「自動継続」がありますが、この場合は自動継続後の契約は新規の契約として扱われます。すなわち、自動更新された日に契約が結ばれたと考えて上記A・Bの判定をすることになります。
また、賃貸借契約書に、「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」という定めを置いていることがありますが、このような定めがある場合、平成26年4月1日以後契約に基づいて8%分の家賃を支払ったときは、本体価額を変更したものと解釈されますから、B①の「事情の変更などの理由で変更を求めることができる」に該当します。したがって、他の要件を満たせば新税率8%が適用されます。
2013.4.16