NO.4 2010年9月30日号

◆ グループ法人税制がスタート!親子会社、兄弟会社間の取引には要注意 ◆

 10月1日から、いよいよ「グループ法人税制」がスタートします。グループ内の企業を全体としてひとつの企業と考えて課税しようとするこの新税制は、今日のグループ企業の実態に即した制度と言えるでしょう。

 しかし、同時にグループ内部での資産の移転による「損出し」を封じ込めるなど、この新税制には新たな増税策が見え隠れしています。 

  

1.グループ法人税制とはどういう制度か?

 企業の中には、子会社や孫会社などを含めてグループ全体として活動しているケースが多く見られます。このようなグループ企業については、個々の企業ごとに課税するよりもグループ全体として課税した方がより実態に即した課税ができる場合が少なくありません。

 平成22年度の税制改正では、このような観点から大幅な改正が行われました。制度の内容は広範にわたり、かつ複雑なものになっていますが、特に中小法人に最も影響を与えそうな3つの制度についてご紹介します。

 

① 100%グループ内の法人間の取引から生じた損益の繰り延べ

 たとえば、親会社が100%株式を所有している子会社など「完全支配関係」にある法人へ、簿価1,000万円の機械を800 万円で譲渡したとします。 従来は親会社において200万円の譲渡損失が、その譲渡した事業年度において計上されました。

 ところが、新税制ではこの譲渡損失200万円は、税務上その譲渡した事業年度においては計上することができません。子会社が、この機械をグループ外の企業等へ売却した時点ではじめて損失を計上できるのです。

 逆に、1,000万円の機械を1,200円で譲渡した場合も、200万円の譲渡利益は譲渡した事業年度では計上されず、グループ外に売却された時点で計上されることになります。 

 したがって、この制度はプループ内部で発生した資産の譲渡損益の計上を認めず、実際にグループ外へ売却されるまで譲渡損益の計上を繰り延べようとするものです。 

 しかし、グループ内での資産の移転によって結果として「損出し」となった場合であっても、業務上必要な資産の移転もあり、また、移転により利益が出ることは稀で、多くの場合損失が発生することを考えると、この制度は納税者に税負担を強いるものと言わざるを得ません。

 

* 譲渡損益の繰り延べの対象となる資産は、固定資産、有価証券、金銭債権などで、棚卸資産は含みません。

  また、これらの資産であっても、譲渡直前の簿価が1,000万円未満の資産は対象になりません。

 

* 「完全支配関係」とは、簡単に言えば親会社が子会社の株を100%所有しているような関係を言いますが、個人オー

  ナー一族がA・B両法人の株を100%所有している場合の、A・B両法人も完全支配関係に当たるなど、より広い概念と

  なっています。 

  

② 100%グループ内の法人間の寄付金の取り扱い

 改正前は、法人間で寄附が行われた場合は、寄付金の支出法人においてその寄付金の額の内、一定の限度額を超える部分の金額のみが損金不算入とされていました。 

 この扱い自体は改正後も変わりませんが、改正後は、完全支配関係にある法人間で行われた寄附については、支出した法 人の側で全額損金不算入とされると同時に、受領法人においては全額益金不算入とされました。

 実務上、親子会社間などで自覚的に寄附が行われることは少ないと思われますが、親会社が子会社の家賃を肩代わりして いたところ、税務調査で家賃相当額を寄付金と認定されるなど、結果として寄付金が発生する場合は多いと思われます。

  

 

③ 大法人の100%子会社に対する軽減税率不適用

 従来は、資本金1億円以下の法人については、全て法人税の軽減税率22%(平成23年3月までに終了する事業年度については18%)が適用されていました。

 ところが、資本金1億円以下であっても、大法人を親会社に持つ法人は、親会社の信用力を背景として事業を行えることなどを考慮して、この軽減税率が適用できないこととされました。

 具体的には、資本金5億円以上の大法人の完全子会社など、大法人と完全支配関係にある法人については軽減税率は適 用されず、原則的な法人税率30%が適用されることとなりました。

 

  

2.グループ法人税制の実務上の注意点

 ところで、当事務所で「完全支配関係」にある法人を当たってみたところ、現状では該当する例はありませんでした。

 しかし、今後は意外なところで完全支配関係に該当するケースが想定されます。たとえば遠縁に当たる2人の個人が、それぞれ100%出資の会社を所有している場合に、両会社間で資産の移転があるとその譲渡損益が繰り延べの対象になることがありますが、この場合、双方の会社に異なる税理士が関与している場合などは、完全支配関係が見落とされる危険性があります。

 このように、グループ法人税制は大企業だけの問題ではなく、私たち中小法人の身近にも、税務上のリスクとして常に存在しているのです。

2010.9.30