個人から法人に低額譲渡した場合の、みなし譲渡課税における「その時における時価」はどう算定するのか。

 株式(非上場)を個人から法人に低額譲渡した。この場合はみなし譲渡課税が適用され、「その時における価額」により譲渡所得を算定する必要があるが、「その時における価額」は具体的にどう計算するのか。


  下記留保条件のもとに、財産評価基本通達(取引相場のない株式の評価)により算定する。

① 低額譲渡(贈与)した個人の株主区分の判定は、譲渡(贈与)直前の議決権数により行う。

② 低額譲渡(贈与)した個人が「中心的な同族株主」に該当するときは、「小会社」として算定する。

③ 発行会社が土地または上場有価証券を有するときは、譲渡(贈与)時の時価により純資産価額を算定する。

④ 純資産価額の算定に当たり、評価差額に対する法人税等(37%)は控除しない。

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1.個人から法人への株式の低額譲渡(贈与)

 個人が法人に対して株式(非上場、以下同じ)を低額譲渡または贈与したときは、「その時における価額」で譲渡したものとみなされる(所法59条①)。

 

2.「その時における価額」とは

 上記の「その時における価額」とは時価であるが、実務的には財産評価基本通達178から189-7(取引相場のない株式の評価)により算定した価額である(所基通59-3)。

 但し、「その時における価額」の算定に当っては下記の留保条件が付されており、通常の相続税評価額の算定方法とは異なる部分があるから注意を要する。

 

留保条件①

 株主の区分は、株式を譲渡または贈与した個人の譲渡または贈与直前の議決権数により判定する。

留保条件②

 株式を譲渡または贈与した個人が、株式の発行会社にとって「中心的な同族株主」に該当するときは、その発行会社の事業規模にかかわらず、常に「小会社」に該当するものとして算定する。

 即ち、純資産価額方式と、類似業種比準方式との折衷方式(L割合=50%)とのいずれか低い価額を採る方法によることになる。

 

<中心的な同族株主>

 その株式の譲渡または贈与をした個人並びにその配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族等が25%以上の議決権を有する場合、その個人は中心的な同族株主となる。

 

<参考>  取引相場のない株式の評価方法の概要

株主の区分 評価方法

取得後の議決権割合5%以上

 

大会社

 

 

 

中会社

 

 

 

小会社

 

 

 

類似業種比準方式

 

 

 

類似業種比準方式と

純資産価額方式との折衷方式

 

 

純資産価額方式

(L割合を0.5とする

折衷方式の選択可)

 

取得後の議決権割合が5%未満 中心的な同族株主がいない場合
中心的な同族株主がいる場合 中心的な同族株主
役員
その他

 

配当還元方式

 

同族株主以外の株主

議決権割合の合計が

15%以上の株主グループに属する株主

取得後の議決権割合5%以上 原則的評価方法 (同族株主の場合と同じ)
取得後の議決権割合5%未満 中心的な株主がいない場合
中心的な株主がいる場合 役員
その他 特例的評価方法 配当還元方式
議決権割合が15%未満のグループに属する株主 

留保条件③

 発行会社が土地または上場有価証券を有するときは、純資産価額の計算に当り、譲渡または贈与があった時の時価によることとされている。上場有価証券の時価は客観的に明らかであるが、土地については路線価による評価額を0.8で割り返すなどの簡易な方法により時価を算定することがある。

留保条件④

 純資産価額の算定に当たっては、評価差額に対する法人税等相当額(37%)の控除は行わない。

 

3.配当還元方式の適用等について

 上記の留保条件にないものについては、財産評価基本通達にもとづいて通常の方法で算定すればよいから、条件を満たせば特例的評価方法(配当還元方式)によることもでき、また、議決権割合が50%以下の株主グループに属する場合の20%評価減の規定を適用することもできる。

 

4.上記の算定方法によらない場合

 個人から法人への譲渡といってもその内容は様々であり、第三者間で経済的な諸条件をもとに決定された価額により譲渡が行われるような場合にまで、上記の算定方法を画一的に当てはめることは妥当ではない。たとえ親族間であっても個別事情にもとづいて算定した合理的な時価にもとづいて譲渡が行われることもあり得ることである。

 したがって、上記の取り扱いは原則的なものであり、これと異なる方法によった場合であってもその算定方法に合理性があれば税務上認められるものと思われる。

 

上記の記述は、2016年5月1日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。

2016.5.1改定 2015.10.31