当社は量販店を経営しているが、顧客に渡す領収書には1円未満の端数を切り捨てた後の消費税を記載している。課税期間を通して計算すると、切り捨てられた消費税の累計額は200万円にのぼるが、消費税の申告書には、この端数を切り捨てた後の消費税を記載しても問題はないか。
領収書の記載要件を満たせば、当分の間、端数切捨て後の消費税を記載しても問題はない。
多数の顧客に少額の物品を多量に販売する量販店や飲食店などは、代金を領収する都度、消費税の1円未満の端数を切り捨てるため、課税期間を通じて計算すると、切り捨てられた端数の累計が相当額にのぼる場合がある。
この場合、売上の都度計上される仮受消費税の額の累計額が、消費税申告書における、税抜課税売上額(付表2①))に5%を乗じて算出される消費税額より少なくなる。
1円未満の端数を切り捨てた後の消費税の累計額をもって消費税の申告をする方法を、一般に「積上げ方式」(旧消費税法施行規則第22条第1項)という。この方式は、平成16年の改正で原則として認められないこととなったが、諸般の事情から一定の経過措置が設けられ現在に至っている。
経過措置は事業者間取引(B to B)と対消費者取引(B to C)とに区分して、代金決済の形態により次のように定められている。
「税抜価格」を前提とした代金決済 |
「税込価格」を前提とした代金決済 | |
事業者間取引 (B to B) |
当分の間、経過措置適用あり
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当分の間、経過措置適用あり |
対消費者取引 (B to C) (総額表示義務対象取引) |
平成19年3月31日をもって経過措置打ち切り | 当分の間、経過措置適用あり |
設問の場合は対消費者取引であるから、現在は総額表示が前提となっており、「税込金額」を前提とした代金決済を行う場合に、決済額に105分の5を乗じた額(消費税相当額)の1円未満の端数を切り捨てた後の金額を領収書に明示していれば、その端数を切り捨てた後の消費税額をもって消費税申告書に記載することができる。
但し、この経過措置は、1領収書を単位として消費税の端数を切り捨て処理することについて認められている特例であるから、1つの領収書に複数の物品が記載されている場合に、それぞれの単品ごとに消費税の端数を切り捨てている場合は、この経過措置の適用を受けることはできない。
経過措置の適用を受けるための手続きは、消費税申告書の「参考事項」の「課税標準額に対する消費税額の計算の特例の適用」欄を「有」とするだけで足りる。
尚、経過措置の適用を受けるための条件を満たす領収書の雛形は、下記のとおりである。
税込金額を前提とした領収書の例
㈱○○○電機
領 収 書
平成24年4月14日
電子辞書 1個 @25,000 ¥25,000
USBメモリ 2個 @3,000 ¥6,000
合 計 ¥31,000
(内消費税 ¥1,476)
お預り ¥35,000
お釣り ¥4,000
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上記の記述は、2012年4月30日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2012.4.30