鈑金加工を行っている法人だが、30年前の創業時に取得した時価6,000万円の工場用地(帳簿価額1,000万円)を有している。一方で、数年前から回収不能の売掛金4,000万円があり、銀行融資を受ける際の障害になっている。
そこで、土地を評価換えして評価益5,000万円(6,000万円-1,000円)を出すと同時に回収不能の売掛金4,000万円を全額貸倒処理したい。
この場合、評価益と貸倒損失との差額1,000万円(5,000万円-4,000万円)に対して法人税が課税されるか。
土地の評価益に対しては法人税は課税されない。したがって、評価益と貸倒損失との差額1,000万円についても法人税は課税されない。
内国法人が土地の評価換えを行い、会計上その帳簿価額を増額して評価益を計上した場合は、その評価益は法人税法上益金の額に算入されない(法法25条①)。したがって、質問の場合は、法人が計上した5,000万円の評価益に対しては法人税は課税されない。
他方、4,000万円の貸倒損失については、損金算入の要件を満たす限り損金の額に算入して差支えない。
したがって、会計上は5,000万円の評価益と同時に4,000万円の貸倒損失が計上されるため、差引き1,000万円の利益が算出されることになる(下記①)。
一方、税務上は5,000万円の評価益は益金の額に算入されない、即ち無税であるが、貸倒損失は損金算入とされるため差引き4,000万円の欠損となる(下記②)。
(①会計上の処理) (②税務上の処理)
評価益 5,000万円 評価益 5,000万円
貸倒損失 △4,000万円 評価益(同額減算)△5,000万円
差引利益 1,000万円 貸倒損失 △4,000万円
差引欠損 △4,000万円
法人が多額の評価益を計上した場合は、会計上の利益金額と税務上の所得金額(欠損金額)との乖離が大きくなる。税務上生じた欠損金額は繰越控除の対象となる。
また、評価益を単一の事業年年度で全額計上せず、複数の事業年度に渡って小出しに計上する場合もある。償却したい不良債権や不良在庫の額に見合う評価益を計上し、残額を爾後の償却のために残しておくのである。適正な会計処理
を行う立場からは好ましくないが、税務上これを規制する特別な規定はない。
尚、貸倒損失は、原則として全額回収不能であることが損金算入の条件であるから、一部でも回收可能である限りは、その全額を損金の額に算入することができない。
上記の記述は、2010年5月22現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2010.5.22