NO.47 保険で節税はできない!2019年7月8日以降の新規契約は要注意。

 保険関係の通達改正により、保険による節税対策が大きな節目を迎えることになりました。改正後は、これまで本来の目的を逸脱した保険の運用により行われてきた課税の繰り延べ(節税)が大きく制約を受けることになります。今後は、会社とって「企業防衛」という保険本来の目的に立ち返ったた保険の運用が期待されます。

 改正は、2019年7月8日以後新たに契約する法人契約の定期保険について適用されます(一部の保険契約については2019年10月8日以後)。

 どのような改正なのですか?

 会社が支払う保険料は大きく分けて資産に計上するものと損金になるものとに分かれます。会社としては保険料の全額を損金にして節税を図りたいところですが、国はこれに歯止めをかけて一定ののルールを設けています。

 これまでも、保険会社はあの手この手でできるだけ多くの保険料が損金になるような保険商品を開発してきましたが、その都度国は通達を改正して節税策を封じ込めてきました。つまり、保険会社と国とのイタチごっこが、保険関係通達改正の歴史だったわけです。

 ところで、今回の改正の内容は大きく見て次のように要約されます。

 

1.改正のターゲットは、前払保険料が大きいタイプの保険契約です。このタイプの保険は、保険契約期間の前半に、   

 後半で支払うべき保険料を含めて多めの保険料を支払っておいて、それが解約時に戻ってくるしくみです。前半に 

 支払った保険料を前払費用としないでどれだけ損金にできるかが節税のポイントですが、改正ではこの「損金にで

 きる」ことについてこれまでのルールを変更しています。 

2.これまでは、保険料のうち資産計上するものと損金になるものとは、保険期間と被保険者の年齢とによって決

 まっていました。ところが、改正後は、主に解約返戻金の返戻率が一番高い時の返戻率(「ピーク時の返戻率」と 

 言います)によって決まります。

3.これまでは、資産計上された部分は、資産計上が必要な保険期間が過ぎるとすぐに取崩すことになっていました

 が、改正後は資産計上が必要な期間が終わっても一定期間は取崩しをしないでおくこととされましたから、実務的

 には保険期間の管理がこれまで以上に必要になってきます。

 改正後の保険料の経理処理はどうするのですか?

 

経理処理は、保険契約のタイプによって、次の4つに分かれます。

 

Aタイプ (ピーク時の返戻率が50%以下の保険契約)

  保険料の全額が損金に算入できます。

 

Bタイプピーク時の返戻率が50%超70%以下の保険契約)

 ① 保険期間の始めから4割の期間  支払保険料の60%が損金になります(40%は資産計上が必要です)。

 ② 保険期間の中間の3.5割の期間   支払保険料の全額が損金になります。

 ③ 保険期間の最後の2.5割の期間   支払保険料の全額が損金になります。同時に、①で資産計上した金額を取  

                   り崩します。

  * Bタイプの保険のうち、年平均保険料が30万円以下の保険契約であれば、①~③にかかわらず全額損金に   

   なります。

  (参考)年平均保険料=保険期間中に支払う保険料の総額÷保険期間の年数

 

Cタイプ (ピーク時の返戻率が70%超85%以下の保険契約)

 ① 保険期間の始めから4割の期間  支払保険料の40%が損金になります(60%は資産計上が必要で  

                    す)。 

   ② 保険期間の中間の3.5割の期間   支払保険料の全額が損金になります。

 ③ 保険期間の最後の2.5割の期間   支払保険料の全額が損金になります。同時に、①で資産計上した金額を

                    取り崩します。

 

Dタイプ (ピーク時の返戻率が85%超の保険契約)

 ① 返戻率がピークになる時期まで

  保険期間の始めから10年間  <支払保険料 × ピーク時の返戻率 × 90%>が資産計上です。

  保険期間の始めから11年目以後返戻率がピークになる時期(注)まで <支払保険料 × ピーク時の返戻率 ×  

                                    70%>が資産計上です。

   ② 返戻率がピークになる時期から、払戻金額がピークになる時期   支払保険料の全額が損金になります。

 ③ 払戻金額がピークになる時期から契約期間終了時まで 支払保険料の全額が損金になります。同時に、①で資産計上した金額を取り崩

       します。

     (注) 「返戻率がピークになる時期」は、「年間の解約払戻金の増加額が、年換算保険料に対して70%以下に

     なる時期」と比べて早く訪れる場合は後者の時期になります。

 まとめ

 改正は、「全損定期(保険)つぶし」などと揶揄されるように、これまで行われてきた保険による節税対策を大きく制約する内容になっています。

 それだけではなく、長期にわたる保険期間の全期間において、経理処理が煩雑になり事務負担が増加することは否めません。保険会社の中には、大同生命のように契約後の経理処理について十分なフォローをしているものもありますが、多くの保険会社は契約後の経理処理までサービスが行き届いていないのが現状です。

 今後、上記のA・Bタイプの保険契約が増加することが予想され、保険料の資産計上終了時期と取崩開始時期とを、法人税申告書に添付する勘定科目内訳書の摘要欄に記載し、備忘として毎期繰り越すなどの実務的な対応が必要になると思われます。

2019.9.21