NO.22 「振り込め詐欺」による損失に所得税の雑損控除は適用されるか?

 振り込め詐欺により、多額の現金を騙し取られる被害が頻発しています。振り込め詐欺により騙し取られた金額の損失について、所得税法第72条の「雑損控除」が適用できるか否かが争われた、国税不服審判所の裁決事例です。  

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-雑損控除とは?-

 「雑損控除」とは、納税者やその親族等の資産について、災害、盗難又は横領により損失が生じた場合に、所得から下記の金額を差引くことができる制度です。

所得から差しける金額 = 次のA、Bのいずれか大きい金額

A  災害・盗難・横領による損失額 - 保険金などで

補填される金額 - 所得金額の10分の1

B 災害関連支出の金額(*) - 5万円

* 災害関連支出とは、災害により滅失した住宅や家財などを除去するための費用などを言います。

 -被害のいきさつ-

 A氏は、平成20年4月、長男を名乗る者から電話で「勤務先の金を流用したので、穴埋めのための金が必要だ。」とうそを告げられ、郵便局から相手方指定の銀行口座へ240万円を振込み送金しました。さらに、同年4月8日と4月10日にも同じ趣旨のうそを告げられ、再び260万円と320万円を振込み送金しましたので、A氏は総額で820万円の現金を騙し取られたことになります。

 

 その後、A氏は電話の相手が長男ではないことを知り、平成20年4月11日に警察署に被害届を提出しました。 

 

 A氏は、騙し取られた金額の損失が、所得税法第72条第1項(雑損控除)にある「災害又は盗難若しくは横領」のいずれかに当たると主張しました。

   

-審判所の判断-

<結 論>

 これに対して審判所は、A氏が受けた損失は、「災害又は盗難若しくは横領」のいずれにも当たらないとして、A氏の主張を退けました。

  

<判断の根拠>

 審判所は、「災害」、「盗難」及び「横領」は、いずれも個別の概念であるとして、それぞれについて、A氏の主張を個別に否定しています。

 

① 災害

 A氏の振込み送金は、A氏の意思に基づいてなされたものだから、この損失は「災害」による損失には当たらない。

 

② 盗難

 「盗難」とは、「財物の占有者の意思に反して第三者が財物を占有すること」であるが、この損失は、振込み送金がA氏本人の意思に基づいてなされているから、「盗難」による損失には当たらない。

 

③ 横領

 「横領」とは、「他人の物の占有者が委託の任務にそむいて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をすること」であるが、振り込め詐欺の犯人はそもそもA氏の物の占有者ではないから、この損失は「横領」による損失には当たらない。

 

 これが審判所の判断です。「災害」、「盗難」、「横領」の語句の定義からすればわからないこともないのですが、世間一般の常識からして、どうにも納得がいかない裁決のようにも感じられます。

 

     国税不服審判所平成23年5月23日裁決 → http://www.kfs.go.jp/service/JP/83/09/index.html  

課税売上高 5億円以下 5億円超
課税売上割合 95%以上 95%未満 課税売上割合を問わず
仕入税額控除の仕方 全額控除できる 課税売上に対応する部分だけ控除できる

* 課税売上高は、対象課税期間の課税売上高が5億円超か以下かで判定します。

前期や前々期で判定するのではありませんからご注意ください。

3.具体的な経理方法

 仕入等に係る消費税のうち、課税売上に対応する部分を計算する方法には、次の2通りの方法があります。

                          ● 一括比例配分方式

                          ● 個別対応

 どちらの方法によるかは、事業者の個別事情によって異なりますが、概して課税売上割合が大きい(即ち、非課税売上の割合が小さい)事業者は、事務処理が簡単な「一括比例配分方式」を採る例が多いようです。

 

 他方、課税売上割合が小さい(即ち、非課税売上の割合が大きい)事業者、例えば金融業や土地の販売を行う不動産業を営む事業者は、事務処理が煩雑ではありますが、税務上有利な「個別対応方式」を採るケースが多いと思わ1れます。

経理方法 一括比例配分方式 個別対応方式
仕入税額控除額 の計算式

<決 算 時>

その課税期間中の課税 仕入等に係る消費税額

×

課税売上割合

<日々の経理>

まず、全ての仕入等の取引を、 仕訳ごとに次の3通りに区分して

それぞれに係る消費税額を計算する。

 

① 課税売上のみに要する課税仕入等

② 非課税売上のみに要する課税 仕入等

③ 課税売上・非課税売上に共通 する課税仕入等

 

<決 算 時>

次に、下記の算式で仕入税額控 除額を計算する。

① 課税売上のみに要する

課税仕入等の消費税額

③ 課税売上・非課税売上に共通する課税仕入等

×

課税売上割合

メリット 事務処理が簡単

一般に、消費税額が

「一括比例配分方式に比べて少なく算定される。

デメリット  一般に、消費税額が「個別対応方 式」に比べて多く算定される。

日々の経理事務で、

仕訳ごとに上記3つの区分を判定しなければならず、

事務的に煩雑になる。 

 一括比例配分方式は事務的に簡便な方法で、採用するために特別な届出をする必要はありません。しかし、一 括比例配分は一度採用すると2年間継続して適用しなければならないことになっています。

 

 したがって、その期間に有価証券や土地を売却したりすると(有価証券や土地の売却は非課税取引です)、課税売上割合が小さくなる(即ち、非課税売上の割合が大きくなる)ため、結果として仕入税額控除できる消費税の額が小さくなり、税務上不利になる場合があります。

 

4.控除対象外消費税額の処理の仕方

 「一括比例配分方式」、「個別対応方式」のいずれを採用したとしても、改正前のように仕入等に係る消費税を全額税額控除できることはありません。通常、どのような業種であれ、預金の利子などわずかであっても非課税売上とされる取引があるためです。

 

 ところで、仕入等に係る消費税のうち、仕入税額控除できなかった部分の金額(「控除対象外消費税額」と言います)は、仮払消費税として貸借対照表の資産の部に残されることになります。この金額は、消費税の計算では税額控除できませんが法人税の計算の上では損金性がありますから、これを仮払消費税から「雑損失」に振替えて、法人税法上その事業年度の損金の額に算入することになります。

 

 ところが、この処理については次の2つの例外があります。

 

<例外1> 控除対象外消費税額が資産(棚卸資産を除く)の取得に係るものである場合

 控除対象外消費税額が固定資産などを取得したことにより生じたものである場合は、固定資産が減価償却によって複数事業年度にわたって費用化されるものである以上、控除対象外消費税額について、発生した事業年度において全額損金の額に算入してしまうのでは理屈に合いません。

 

 そこで、固定資産などの取得により生じた控除対象外消費税額は、次のいずれかの方法により複数の事業年度に配分して損金の額に算入することとされています。

 

   イ その固定資産などの取得価額に算入して、その事業年度以後の減価償却費として損金の額に算入する方法

   ロ 「繰延消費税額」として資産計上し、次の金額を限度として60月に按分して損金の額に算入する方法

繰延消費税額 ×

その事業年度の月数


60月

= 損金算入額(限度額)

* 損金の額に算入するためには、損金経理が要件とされています。

* 資産を取得した事業年度に限り、上記算式の限度額の2分の1が限度額になります。 

 ただし、課税上の簡便化のためと思われますが、固定資産などを取得したことにより控除対象外消費税額が発生した場合であっても、次のいずれかに該当するときは、控除対象外消費税額の全額をその事業年度の損金の額に算入することとされています。この場合も損金経理が要件になっています。

 

    イ その事業年度の課税売上割合が80%以上であること。

    ロ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること。

 

<例外2> 交際費に係る控除対象外消費税額の扱い

 交際費に係る控除対象外消費税額は交際費の一部と考えられますから、交際費の額として交際費の損金不算入額の計算を行い、法人税申告書別表4で加算します。

 

 控除対象外消費税額のうち、交際費として加算する金額の具体的な計算方法は次の通りです。この算式で計算された金額を、法人税申告書別表15の6に記入して交際費の損金不算入額を計算することになります。

 

    イ 税抜経理を行っている場合

    ● 一括比例配分方式を選択している場合

 

交際費として加算する金額 = 交際費にかかる消費税額 × (1-課税売上割合)

 

    ● 個別対応方式を選択している場合

       同じ交際費にかかる消費税でも、次の区分ごとに計算しなければなりません。

      ・ 課税売上のみに対応する交際費にかかる消費税 → 交際費として加算する処理は不要です。

      ・ 非課税売上のみに対応する消費税にかかる消費税 → 全額交際費として加算します。

      ・ 課税売上と非課税売上に共通する交際費にかかる消費税 → 次の算式で計算した額を加算します。

 

交際費として加算する消費費税 = 共通する交際費に係る消費税 × (1-課税売上割合)

 

    ロ 税込経理を行っている場合

       税込み経理を行っている場合は、そもそも控除対象外消費税が発生しませんから、交際費の加算の問題は生じません。

 

 上記<例外1>とともに、申告書作成ソフトによってもチェックがきかないため、実務上のミスが多い項目となっており、特に注意が必要です。

 

5.個別対応方式による場合の実務的な対応について

  一括比例配分方式を選択した場合は、実務的には改正前の経理方法をそのまま継続していれば良いことになりま

 す。改正前と同様に、収益について課税売上・非課税売上・免税売上の区分を行い、仕入等については、課税仕入と

 それ以外の区分さえしておけば、税制改正後も対応できると考えられます。

 

  問題は、個別対応方式を選択した場合です。個別対応方式によりますと、、売上等収益については改正前の経理方

 法を続けていけば問題ありませんが、課税仕入については、仕訳ごとに次の3区分のいずれに該当するかを判断して

 経理を行う必要があります。

 

                 <個別対応方式による場合の課税仕入の経理方法>

改正前

課税仕入

改正後

① 課税売上のみに要する課税仕入

② 非課税売上のみに要する課税仕入

③ 課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入


 このような煩雑な事務処理は、会計ソフトによらなければ実際上不可能でしょう。

 

 経理事務をできる限りルーティン化して、個別に判断する時間を節約するためには、会計ソフトで勘定科目ごとに消費税の課税区分を連動設定することが最も現実的と思われます。

 

         <例>

          材料仕入 勘定   → ① 課税売上のみに要する課税仕入

          社宅経費 勘定   → ② 非課税売上のみに要する課税仕入

          事務用品費 勘定  → ③ 課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入

 

 また、課税売上高5億円を超える事業者は、通常本社以外に複数の工場や営業所を設けている場合が多いので、各工場ごと、各営業所ごとに課税区分を設定するなどの方法もあるでしょう。

 

 同じ本社内においても、営業部の経費は①課税売上のみに要する課税仕入、総務部や経理部の経費は③課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入、などとする方法も取り得ると思います。

 

 いずれにしても日々の経理事務に係ることですから、会社の個別事情に合った、合理的で定型的な基準を設けて、事務コストを極力減らすことが望まれます。

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