平成の徳政令とも言われた中小企業金融円滑化法は、来年3月に期限切れを迎えます。ところが円滑化法が期限切れを迎えた後も、借り手である中小企業に対する金融機関のスタンスは基本的には期限切れ前と変わらないことになりそうです。
中小企業金融円滑化法(以下「円滑化法」と言います)が施行されてから丸3年が経とうとしていますが、円滑化法施行後も企業の倒産が後を絶たないのが現状です。
こうした中で、中塚一宏金融相は11月1日、円滑化法の期限が切れた後の金融機関の役割や借り手側の課題などについて談話を発表しました。談話では、金融機関に対しては、「個々の借り手の状況をきめ細かく把握し、他の金融機関との連携を図りながら、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきということは、円滑化法の期限到来後においても何ら変わるものではありません。」としています。
また、1年以内に経営改善計画を策定できる見込みがある融資先は不良債権としない、などの条件は恒久措置として期限切れ後においても不良債権の定義は変わらない、とも言っています。
借り手である中小企業に対しては、「借り手が抱える経営課題は様々であり、・・・・・・借り手が引き続き課題の解決に向けて努力していくことは重要ですが、全ての借り手に対して来年3月までに何らかの最終的な解決を求めるというものではありません。」と述べています。
このように、談話は、円滑化法という法律の期限が切れた後でも、行政上の取り扱いにおいて、実質的に円滑化法を延長する内容となっています。
この談話を受けて、金融機関の融資の現場では、円滑化法の期限切れ後の借り手に対する対応の仕方として、次の3項目が示されているようです。
① 借り手に対しては、期限切れ後もこれまでのスタンスを継続する。
② リスケ(貸付条件変更)等の経営相談には、積極的に応じる。
③ 借り手に対するコンサル機能を強化する。
中小企業の経営者の中には、円滑化法の実質的な延長によって、当面「貸しはがし」などの最悪の事態は回避できたものと、ひとまずほっとしている方もいらっしゃると思います。
しかし、この度の金融相の談話は選挙を意識したものと見ることもでき、金融庁は円滑化法の期限が切れた後は最終的な「出口戦略」を見出さざるを得ないことになります。
その出口戦略の一つが、今年8月に施行された中小企業経営力強化支援法ですが、この制度は中小企業の経営力を強化するために、金融機関・商工会・税理士等を「経営革新等支援機構」に認定し、中小企業の経営力を強化するためのコンサル機能を担わせようとするものです。
しかし、この制度も、「金融庁の指導不足により『出口』が見つからなかった場合に、金融機関や税理士等に責任を転嫁しようとするもの」という穿った見方もあり、今後の金融庁の「出口」の探し方には十分注意する必要がありそうです。
2012.11.28