NO.41 平成27年10月1日から消費税にリバースチャージ方式導入。実務はどう変わる?

 従来は、海外から購入する電子書籍等やグーグルアドワーズの広告など、インターネットを介したサービスについては消費税がかかりませんでした。

 ところが、平成27年10月1日から、国内の事業者が海外の事業者からこれらのサービスの提供を受けた場合には、提供を受けた国内の事業者について消費税の申告・納税義務が発生することになりました。これがリバースチャージ方式です。リバースチャージ方式のしくみはどうなってるのでしょうか。これを理解するためには、従来の消費税の知識を逆転させて考える必要があります。

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リバースチャージ方式とは?

 リバース(REVERSE)は、「逆転の」という形容詞です。チャージ(CHARGE)には、「課税」または「税金」という意味がありますから、リバースチャージを直訳すると「逆転の課税」となります。

 

 ところで、消費税は「国内取引」に対して課税されます。これが大原則です。

 

 改正前は、国際間のネット広告の配信サービスの提供などが「国内取引」に当るかどうかは、情報を提供する者の事務所等の所在地が国内にあるか外国にあるかによって判定することとされていました(旧消令6①・②)。したがって、外国の事業者から、グーグルアドワーズなどのネット広告の配信サービスの提供を受けた場合は、サービスの提供者は外国の事業者ですから、これらのサービスの提供は「国外取引」に該当していました。したがって、消費税は課税されませんでした。

 

 ところが、リバースチャージ方式の導入によって「国内取引」の考え方が逆転します。制度の導入後は、ネット広告の配信サービスなど電気通信利用役務(インターネット等を介したサービス)の提供については、それが「国内取引」に当るかどうかは、サービスを提供する者ではなく、サービスを受けた者の住所等が国内にあるか外国にあるかによって判定することになったのです。

 したがって、改正後は、ネット広告の配信サービスの提供を受けた者が国内の事業者の場合は、その国内の事業者に消費税の申告・納税義務が発生します。

 

 尚、リバースチャージ方式は、国内の事業者が、外国の事業者からがネット広告の配信サービスなどの電気通信利用役務の提供を受けた場合、つまり事業者向けの取引(BtoB取引)の場合に適用される制度です。

 

 ただ、国内の事業者が、たまたまWebサイトで電子書籍を1冊購入したような場合は、サービスの提供者から見ると、相手が事業者か消費者かを確認することはできません。このような取引はBtoB取引ではあっても、実質的には一般消費者が行う取引と同じですから「事業者向けの取引」には該当しないと考えられます。

国内取引の判定の基準<参考>

種類・配当等の種 改正前 改正後
役務提供の区分 情報の提供等 電気通信利用役務の提供
「国内取引」の判定 情報の提供を行う者の事務所等の所在地 役務の提供を受けた者の住所等
参考条文 旧消令6①・② 消法4③三

なぜ今、リバースチャージ方式なのか?

 たとえば、国内の会社がグーグル(外国の会社)から100,000円でネット広告の配信サービスを受けたとします。改正前は、この取引は国内取引に当りませんから消費税は課税されませんでした。そうしますと、グーグルは消費税分を上乗せしないで価格を設定することができます。その価格は100,000円です。

 

 ところが、国内の事業者からネット広告の配信サービスを受ける場合はどうでしょうか。国内の事業者が行うサービスは通常の国内取引です。したがって、国内の事業者には消費税の申告・納税義務がありますから、消費税分を上乗せして価格を設定せざるを得ません。つまり価格は108,000円です。

 

 これでは、国内の事業者は、グーグルとの価格競争で負けてしまいます。このような競争条件の不公平をなくす観点から導入されたのがリバースチャージ方式です。

 

 リバースチャージ方式導入後は、ネット広告の配信サービスを受ける会社は、外国の会社から100,000円でネット広告の配信サービスを受けたとしても、自ら消費税8,000円を申告することになりますから、結局購入価格と消費税との合計で108,000円を負担しなければならなくなります。結果として、外国の会社から購入しても国内の会社から購入しても理論的には同じ負担になり、税制上のメリットを受けるために外国の会社から購入するという選択肢はなくなります。

会計処理と消費税額の計算の仕方は?- 仕訳で考えてみよう

 消費税は、通常は販売先などから預かった消費税相当額に対して仕入税額控除(仕入先等などに預けた消費税相当額を差し引くこと)をして、その差額を納めるのが原則です。ところが、リバースチャージ方式によると、預かってもいない消費税について申告・納税義務が生じることになります。ここが今までの消費税の考え方と異なる点で、わかりにくいところです。以下、リバースチャージ方式の実務的な対応の仕方を見ていきましょう。

① 会計処理は?

  まず、国内事業者が、外国の会社から100,000円でネット広告の配信サービスの提供を受けた場合を考えてみます。通常であれば、仮受消費税は課税売上に伴って発生します。ところが、リバースチャージ方式によれば、ネット広告の配信サービスの提供を受けた時、つまり費用が発生した時に仮受消費税が現れます。したがって、次のような今まで見たことのない奇妙な仕訳を起こすことになります。

         広告宣伝費  108,000 / 現  金   100,000

                              仮受消費税  8,000

  しかし、この場合ネット広告の配信サービスは国内取引ですから課税仕入れに該当し、仕入税額控除の対象になります。したがって、上記の仕訳は次のように修正されます。

 

    広告宣伝費  100,000 / 現  金  100,000

 

    仮払消費税     8,000 / 仮受消費税  8,000

 

 このように、仮払消費税と仮受消費税とが、借方・貸方に同額計上されることになります。

 これが、リバースチャージ方式の理論的な経理方法ですが、仮払消費税と仮受消費税とを両建てするなら、はじめから仕訳をしないでも同じことです。そうしますと、結局次のような単純な仕訳でよいことになります。

 

    広告宣伝費  100,000 / 現  金  100,000

 

* 仕訳の仕方はBが原則ですが、Aによることもできます。Aの場合は、期末で仮払消費税と仮受消費税について逆仕訳を起こして、両方の勘定科目の残高を0円にすることになります。

 

 一般的には、Bの仕訳が行われることになるでしょう(法人税個別通達5の2参照)。

 

② 消費税額の計算は?

 このように、リバースチャージ方式では、仕訳の考え方として仮払消費税と仮受消費税とが両建てされますが、実際の消費税の申告では税額はどのように計算されるのでしょうか。

 

 イ 課税売上割合が95%以上の場合

   上記の例では、ネット広告の配信サービスを受けた段階で、仮受消費税8,000円が発生しますが、他方で仮払消費税も8,000円発生します。同じように、消費税の申告書においても、課税標準額に対する消費税額と控除対象仕入税額とにそれぞれ8,000円(*)が記入されます。

 * 実際の申告書は、消費税と地方消費税に区分して作成しますから、6,300円(100,000×6.3%)が記入されます。

 したがって、課税売上割合が95%以上で課税仕入れに係る消費税額を全額控除できる限りは、リバースチャージ方式導入による消費税の負担はないことになります(8,000円-8,000円=0円)。

 この場合も、①の「会計処理は?」と同じ考え方で、「消費税額」と「控除対象仕入税額」とに何も記入しないでも結果は同じです。したがって、課税売上割合が95%以上の場合は、結果としてリバースチャージ方式が導入される前と同じ方法で消費税の申告書を作成すればよいことになります(改正法附則42)。

 改正後の消費税申告書の「付表2の⑩・⑪」欄はリバースチャージ方式導入後に設けられたものですが、これらの欄は空欄にしておきます。

 

 ロ 課税売上割合が95%未満の場合

   しかし、課税売上割合が95%未満の場合はこのように簡単にはいきません。95%未満の場合は、個別応方式でも一括比例配分方式でも、課税仕入れに係る消費税のうち多少でも仕入税額控除できない部分(控除対象外仕入税額)があるからです。

 上記の例では、ネット広告の配信サービスに伴って発生した消費税8,000円の全額が控除できるわけではなく、8,000円に課税売上割合を乗じた部分だけが仕入税額控除できます。

 課税売上割合を80%とすると、仕入税額控除できない消費税は次のようになります。

              8,000×(1-80%)=1,600

 この金額が、リバースチャージ方式により、新たに発生する消費税の負担分になります。

 リバースチャージ方式による控除対象外仕入税額は、消費税の計算の上では仕入税額控除ができませんが、法人税の計算の上では損金性がありますから、一般の控除対象外仕入税額とあわせて雑損失などの勘定科目で処理します。

                     雑損失  1,600 /  未払消費税  1,600

リバースチャージ方式に対する実務的な対応は?

1.簡易課税が適用される事業者や免税事業者は?

 これまで見てきたように、リバースチャージ方式は、原則課税により消費税の申告をする国内事業者で、課税売上割合が95%未満の場合に適用されます。したがって、課税売上割合が95%以上であればリバースチャージ方式の適用はないわけですが、この他にも、簡易課税制度が適用されている事業者(法附則44②)や、免税事業者もリバースチャージ方式による申告・納税は必要ありません。

 

2.課税売上高が5億円を超える事業者は?

 また、課税売上高が5億円を超える事業者は、課税売上割合が95%以上であっても、課税仕入等にかかる消費税

額を全額控除することはできず、課税売上に対応する部分だけしか控除できないという規定があります。

 しかし、リバースチャージ方式の場合の仕入税額控除額の計算では、たとえ課税売上高が5億円を超えていても、課税売上割合が95%以上であれば、全額を仕入税額控除することができます。

 

3.リバースチャージ方式の実務的な対応は?

 そうしますと、実際にリバースチャージ方式による申告・納税義務がある事業者は相当限定されてくると思われます。

 しかし、ある課税期間にたまたま土地を売却をしたために、課税売上割合が95%未満になったような場合は注意が必要です。このような場合を想定して、電気通信利用役務の提供を受けた場合は、その時点での課税売上割合が95%以上であると95%未満であるとにかかわらず、会計ソフトで上記①のBの仕訳を行うと同時に、「特定課税仕入」などの課税区分を的確に入力しておくのが無難な会計処理といえるでしょう。

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