だれも疑わなかった税務行政の「常識」が、ある日突然「非常識」に! 生命保険特約年金にかかる相続税と所得税の「二重課税」のトリックが、一人の主婦が起こした税務訴訟によって突き 崩されました。
この事件は、長崎市の主婦(49歳)が、2002年に夫から生命保険特約に基づき将来年金を受給する権利を相続したところ、相続の際に相続税を課税されているにもかかわらず、実際に年金の支払いを受けた段階でもさらに所得税を課税されたというものです。
主婦は、これを相続税・所得税のダブル課税(二重課税)であるとして訴えを起こしました。
これに対して、最高裁第三小法廷は、「相続税の課税対象になった部分に所得税を課すのは二重課税にあたる」として、国税側の処分を取消したため、納税者が勝訴した一審、長崎地裁の判決が確定しました。
判決が確定したことにより、主婦には国から25,600円が還付されますが、問題は金額の多寡ではなく、判決が税務行政に与えたインパクトにあります。
二重課税は、税法の体系上厳に排除されるべきものですが、国税当局や税理士などの専門家の間でもいわば「常識」となっていた今回の二重課税が、「主婦」という素人によってくつがえされたことは、税務行政の盲点を突いたものとして大きな意味があります。
このタイプの生命保険契約は全国で数万件に上るといわれており、二重課税が実務的に行われるようになってから50年以上が経過していることから、国税当局が違法に課税した所得税をどのような形で還付するのかが今後の問題になります。
当事務所でも、これまでに5件の該当事例があり、今後の税務当局の対応には目を離せないところです。
2010.7.13