会社が生命保険金を原資として死亡退職金を支払った場合、第5表の純資産価額はどのように計算するのか。

 当社は非上場の会社だが、社長が死亡したため保険会社から生命保険金10,000千円を受け取り、これを原資として社長の遺族に死亡退職金3,000千円と弔慰金500千円を支給した。尚、この保険は定期付終身保険であり、社長死亡時において貸借対照表には保険積立金1,000千円が計上されていた。この場合、当社の株式の評価に当り純資産価額(評価明細書第5表による)はどのように計算するのか。

                           生命保険金      10,000千円

                           保険積立金       1,000千円

                           死亡退職金       3,000千円

                           弔慰金          500千円


① 生命保険金の額を第5表の「資産の部」に、死亡退職金の額を第5表の「負債の部」に計上する。

② 生命保険金と死亡退職金との差額(保険差益)に対する法人税等を計算して「負債の部」に計上する。

③ 資産計上されている保険積立金は第5表から除外する。

④ 弔慰金は、退職金に該当しないものであれば第5表の「負債の部」に計上しないが、その弔慰金が法人税法上

 損金の額に算入されるものであれば、②の保険差益に対する法人税等の計算上生命保険金から控除する。

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1.概 要

 会社の純資産価額を算定する場合、課税時期において仮決算を組む方法と、課税時期の直前期末の資産及び負債に基づく方法とがあるが、いずれの方法による場合でも、決算報告書に記載されていない資産・負債であっても、評価明細書第5表に組み込まなければならないものがある。

 質問の、被相続人の死亡により取得する生命保険金やこれを原資として支払われる死亡退職金はこの例であり、これらは通常決算報告書には表れていないが、評価明細書第5表を作成するときは「資産の部」及び「負債の部」に記載しなければならない。

 

2.生命保険金の扱い

 生命保険金の請求権は被相続人の死亡により発生するものであるから、評価明細書第5表により純資産価額の計算をするに当っては、生命保険金の額を未収保険金として「資産の部」の「相続税評価額」及び「帳簿価額」の両方に記載することになる。

 質問のように、生命保険が掛け捨て保険でなく、終身部分が含まれているため貸借対照表に支払った保険料の一部が資産計上されている場合には、その保険積立金の金額を除外して第5表を作成する。

 

3.死亡退職金の扱い

 生命保険金を原資として死亡退職金が支払われた場合は、通常課税時期においては死亡退職金の支給は確定していないが、「資産の部」に計上された生命保険金に対応するものとして、死亡退職金の額を評価明細書第5表の「負債の部」の「相続税評価額」及び「帳簿価額」の両方に記載する。

 

4.保険差益に対する法人税等の扱い

①会社に繰越欠損金がない場合 

 生命保険金から死亡退職金を控除した差額(保険差益)に対しては理論的に法人税等が課税されるから、保険差益に対する法人税等に相当する金額を、評価明細書第5表の「負債の部」の「相続税評価額」及び「帳簿価額」の両方に記載する。

 保険差益に対する法人税等は、生命保険金から保険積立金を控除し、その差額から死亡退職金を控除した金額に税率を乗じて算定する。

 具体的には、会社が仮決算を組んでいれば仮決算により計算された法人税等を用いるが、課税時期の直前期末の資産及び負債に基づいて純資産価額を計算している場合は、保険差益の37%(注)相当額によることができる。

 (注)37%は、平成28年4月1日以降相続等により取得した株式について適用される。この率は「評価差額に対する法人税等に相当する金額」の算定に用いる法人税等の率と同様である。

②会社に繰越欠損金がある場合

 会社に繰越欠損金がある場合は、課税対象となる所得金額は保険差益から繰越欠損金を控除した金額になるため、保険差益から繰越欠損金を控除した金額に基づき法人税等に相当する金額を計算する。

 

5.弔慰金の扱い

 生命保険金を原資として死亡退職金を支給したケースについては、国税庁ホームページの「質疑応答事例」に解説があるが、会社が弔慰金を支払った場合についての具体的な記述はない。しかし、会社が支払った弔慰金が退職金として相続税法上「みなし相続財産」とされない範囲のものであるとした場合、これを第5表で負債とすると双方の整合性を欠くことになるから、弔慰金は第5表の「負債の部」に記載することはできないと思われる。

 また、弔慰金を第5表の負債の部に記載しないとしても、その弔慰金が法人税法上損金の額に算入されるものである限り、上記4の保険差益に対する法人税等の計算においては死亡退職金と同様に生命保険金から控除する必要がある。

 

6.保険差益に対する法人税等の具体的な計算例

 質問のケースでは、具体的には次のように計算される。

 <前提>

  生命保険金      10,000千円

  保険積立金       1,000千円

  死亡退職金       3,000千円

  弔慰金           500千円

 

 <計算>

   (保険金)  (保険積立金)  (退職金)   (弔慰金)

  (10,000千円-1,000千円 -3,000千円 -500千円)×37% = 2,035千円

 *仮に、会社に2,000千円の繰越欠損金があるとすると、上記算式は次のようになる。

   (保険金)  (保険積立金)  (退職金)   (弔慰金)

  (10,000千円-1,000千円 -3,000千円 -500千円 -2,000)×37% = 1,295千円

 

7.評価明細書第5表の記載の仕方

 評価明細書第5表は、具体的には次のように記載する。

 

1.資産及び負債の金額(課税時期現在)
  資産の部 負債の部
科目 相続税評価額 帳簿価額 科目 相続税評価額 帳簿価額
  千円 千円   千円 千円
未収生命保険金 10,000 10,000 退職金 3,000 3,000
保険積立金

保険差益に対する

法人税等

2,035 2,035
           

上記の記述は、2017年5月1日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。

2017.5.1